総理総裁を目指す者が、自らの派閥も小規模すぎて雲散霧消するような状態では、国盗りの準備ができていないと言われても仕方がない。「人は石垣」なのである。

候補者公認問題

 党内に大きな亀裂を生んでいるのが、候補者公認問題である。

 政治資金収支報告書に不記載があった議員のうち、10月6日には、下村博文、平沢勝栄、萩生田光一、高木毅、西村康稔、三ツ林裕巳の非公認が決まった。9日には、菅家一郎、中根一幸、越智隆雄、今村洋史、小田原潔、細田健一が追加され、合計12人が非公認となった。

 また、公認はされたものの、松野博一、武田良太ら37人には比例代表での重複立候補を認めなかった。

 私は、最初は無所属で選挙に出たが、選挙運動については、資金面でも、組織面でも大変苦労した。ボランティアに支えられて何とか戦い抜くことができた。

 その後、参議院選挙出馬に当たり、自民党から公認されると、公認料を頂き、党の組織の支援でポスターも全掲示板に初日から貼り終わることができた。まさに雲泥の違いである。

 そして、衆議院の場合、小選挙区制なので、1選挙区で1人しか当選できないが、比例重複のおかげで、当選者と僅差の場合は復活できる。この目安となるのが惜敗率である。この制度のおかげで、いったん死んだ者が蘇るので、ゾンビ議員などと軽蔑されることがある。選挙に弱い政治家にとっては、重複立候補の可否はまさに死活問題なのである。

 後で追加になった6人については、「説明責任が十分果たされず、地元での理解が十分進んでいないと判断される者」というのが非公認の理由である。要するに、彼らは選挙に弱く、小選挙区で敗北し、重複で復活するような議員である。つまり、勝つ可能性の低い候補である。

 どうせ負ける候補なので、公認もする必要はないし、それで非公認者の数が増えれば、有権者に対して、「自民党は厳しく裏金問題に対応しているのだ」と啖呵を切ることができるという公算である。まさに魂胆が見え透いている。

 しかし、線引きの基準は曖昧で、石破首相自ら、「どうすれば我が党が勝てるかという観点で判断した」と述べている。

 非公認の候補者はほとんどが旧安倍派であり、彼らを中心に石破に対する反発が広がっている。

 これで選挙に大敗すれば、党の一体化を継続するのは困難となろう。