しかも、高市の推薦人20人のうち、14人が旧安倍派で、「裏金議員(政治資金収支報告書の不記載議員)」が13人をも占めていたので、政治資金の問題が大きな争点になっている時期には不適切だという判断が働いたのであろう。

 こうして、石破が、21票差で高市を制する結果となったのである。

挙党態勢にはほど遠い

 石破首相の党役員・閣僚人事を見ても、石破側近や石破支持組でほぼ占められている。しかも、女房役の官房長官には岸田内閣の林芳正を留任させ、幹事長には森山裕を据えたが、これを見ても、石破の党内人脈の貧弱さがよく分かる。

自民党の森山裕幹事長(写真:共同通信社)
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 石破を絶対に支持するという議員の数があまりにも少ないのである。人望がないとよく言われるが、石破の許には人が集まらないのである。挙党態勢にはほど遠く、総裁選候補のうち、高市早苗や小林鷹之は、それぞれ、総務会長、広報本部長という石破からの人事の誘いを断り、反石破の立場を鮮明にしている。

 石破は、総裁選の最中には、首相になったら、予算委員会などで十分に政策論争をした上で解散すると明言していた。ところが、本会議、党首討論のみで憲法7条解散に踏み切った。

 石破首相は、このように前言を翻し、国民の期待を裏切っており、「嘘つき」と言われても仕方がない。党内で強力な支持母体を持たないため、他集団(派閥)の言いなりになってしまう。

 森山幹事長をはじめ周囲の有力者たちから、「総裁選で盛り上がり、自民党の人気もあがり、しかも野党が選挙の準備が整っていないときにこそ、解散すべきだ」と説得されたようである。つまり、すぐに解散総選挙をするしか選挙での大敗を避ける道はないという判断が下ったのである。

 これで、頑固に自説を主張して譲らないという石破のイメージが大きく損なわれてしまった。強固な基盤を党内に築けなかった石破の弱点がもろに出た。党内の有力者に頼らなければ解散総選挙の時期も決められなかったのである。別の言い方をすれば、周囲の意見をはねつけるだけの党内基盤がない。