航空機向け炭素繊維の廃材を再利用

 ここでいう再生カーボンとは、スバルの事業のひとつである、航空宇宙カンパニーが航空機やその部品の軽量化を目的として量産している炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のリサイクル素材を指す。航空機ではボーイング787などで使われている。

スバルとマツダの共同記者会見の様子(写真:筆者撮影)

 スバル航空宇宙カンパニーの関係者によれば、航空機部品製造時に発生するCFRPの廃材を航空機部品向けに再利用することは、現在の航空機の設計要件としては「難しいため、一部を除いて埋め立てもしくは焼却処分している」という。

 そうした中、スバルは2021年初旬に、炭素繊維に樹脂を浸み込ませたシートである「プリプレグ」をリサイクルするための開発を始め、同年末には再生炭素繊維の製造プロセスを確立させた。

 実証実験として、2022年のスーパー耐久シリーズ中盤戦からスバルとして参戦しているレース車両のボンネットなどで使用してきた。

 こうしたスバルの新たな試みについて、スーパー耐久シリーズにおけるワイガヤなどの場で、マツダでもスバルの再生カーボンを活用できるのではないかという話が持ち上がったという。

 マツダとスバルは今後、スバルが開発した再生炭素繊維に関する新しい成形法の検証などを協力して行う。

 その上で、マツダとしての実証試験として、スーパー耐久シリーズ最終戦となる11月の富士スピードウェイ戦で再生炭素繊維を用いたマツダ3 Bio conceptのボンネットを採用する。

マツダが来シーズンにスーパー耐久シリーズ投入予定の「マツダ3 Bio concept」のイメージ図(写真:筆者撮影)

 さらに、来シーズンでは、フロントバンパー、フロントフェンダー、そしてリアバンパーにも再生炭素繊維を採用する予定だという。

 完成予想図が公開されたが、現行モデルと比べてかなりアグレッシブな印象を受けた。

 マツダ関係者は、こうしたレース車両向けに限定せず、「(量産車の)ハイグレードの部品化」で再生炭素繊維を採用する可能性についても示唆した。

 マツダはスーパー耐久シリーズを筆頭とする自社のモータースポーツ活動において、「マツダ スピリットレーシング」というブランド展開を強化している。その一環として、量産モデルでもハイグレードモデルの設定を視野に商品企画・開発を進めている。

 マツダ3の量産モデルでも近い将来、再生炭素繊維を使ったさまざまな製品が投入される可能性は十分にあると言えるだろう。合わせて、スバルでも今後、STI(スバル テクニカ インターナショナル)と連携した再生炭素繊維の関連部品が登場することも考えられる。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
Wikipedia