判決文の中には、「社会的地位のある歯科医が嘘の証言をするとは考えられず、不動産業のY氏の証言は信用できない」と、まるで職業差別のような文言まで入っていた。

被害者が逆転勝訴、損害賠償請求訴訟でも勝利

 この判決に怒り心頭になったのが大阪地検だった。検察は、最後の証言者となった歯科医を詳しく調べた。すると「羽賀とは喫茶店で数回顔を合わした程度」としていたこの歯科医は、なんとハワイで行われた羽賀の結婚式にも参加していた。羽賀と歯科医師は昵懇の仲であったのだった。そして検察は、この歯科医師を偽証罪で逮捕したのだった。

 歯科医師の証言が偽証だったということが判明し、2011年、大阪高裁は羽賀に有罪判決を下す。羽賀は上告したが、13年、最高裁は訴えを棄却。有罪が確定した羽賀は、沖縄の刑務所に収監された。

 さらに羽賀は、Y氏が起こした約4億円の損賠賠償を求める訴訟でも敗訴する(Y氏は未公開株の購入費以外にも数千万円を羽賀に貸していた)。2016年、羽賀に約4億円の請求額全額を弁済せよとの判決が下ったのだ。

 ところが、である。羽賀はこの判決など全く気にしていないかのように1円たりともY氏には返金をしなかった。当時、羽賀側に差し押さえできるような資産が見当たらないことが、Y氏にとっては痛かった。