「ホテルの喫茶店でY氏と会う絵を描いたのは羽賀容疑者でした。本人がその場に現れなかったのも計算してのことでしょう。もしもホテルの部屋を使うとなると密室状態になりますから、『密室で脅迫されて判を押した』と抗弁される可能性をつぶしておきたかったのだと思います。場所を喫茶店にしたのも、弁護士を同席させたのも、『誰でも出入り自由なオープンスペースでの正常な話し合いだった』と装うための姑息な演出です。後で調べるとこの弁護士は100万円の報酬でわざわざ東京から大阪に来ていたことが判明しています」(全国紙・元司法担当デスク)

ようやく逮捕、だが一審では無罪判決

 Y氏は刑事告訴するため複数の警察署に被害届を出したものの、どこもまともに取り合ってくれなかった。だが、羽賀とY氏の間のトラブルを写真週刊誌「FRIDAY」が報じるに至って、警察はようやく捜査に本腰を入れ始める。そして07年6月、羽賀や渡辺らは大阪府警に詐欺未遂容疑で逮捕・起訴される。

2007年7月13日、家宅捜索のため、羽賀研二容疑者の事務所に向かう大阪府警の捜査員ら=東京都千代田区(写真:共同通信社)
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 だが、羽賀は裁判でも姑息な細工を弄してきた。

 大阪地裁で行われた裁判では、Y氏が未公開株の元値を知って購入したか否かが争点となっていた。裁判も佳境に入ってきたころ、羽賀側から裁判長に「最後にもう一人証人を申請させてほしい」との要望が入る。それが認められ出廷してきた証人というのは東京・銀座で歯科医院を営んでいる歯科医だった。この歯科医師は羽賀とはたまに喫茶店で顔を合わせる程度の仲であるという。そしてこの歯科医師は裁判で「Y氏は羽賀容疑者から(未公開株の)元値のことを聞いていた」と証言したのだ。Y氏にとってはまったく身に覚えのない話だった。

 そして注目の一審の判決――。驚くべきことに、裁判長は羽賀に無罪の判決を下した。