弁済逃れのためにあの手この手

 だが、羽賀が刑務所を出所してくる数カ月前にY氏のもとに届いた書類で状況は一変する。届いた封書には差出人も書かれていなかったが、中の書類に書かれていたのは羽賀が沖縄県内に所有している土地やビルの一覧表だった。

 Y氏が半信半疑でその書類をもとに登記などを調べると、一覧表の内容が正確であることが分かった。羽賀はY氏から騙し取ったカネで密かに不動産を買い漁っていたのだった。

 しかし、Y氏の関係者が沖縄県内で羽賀所有の不動産の調査に乗り出すと、これを察知した羽賀は、2006年に結婚していた妻と、Y氏への弁済命令が下った直後に離婚、財産分与という形をとって不動産の名義をすべてこの“元妻”名義に変えていたのだ。Y氏からの差し押さえを防ごうとする“偽装離婚”だった。これにより2019年1月、羽賀と元妻が逮捕。20年9月の裁判で、懲役1年2カ月の実刑判決が下された。

 羽賀の悪だくみはこうして暴かれたが、Y氏への弁済は一向に始まらなかった。

 羽賀が沖縄に持っていた不動産には抵当権が設定されていた。それを差し押さえるためには、その抵当権を外す裁判から始めなければならなかった。その作業は、遅々として進むことがなかった。

 羽賀は相変わらずY氏に1円たりとも返金するつもりはないかのようだった。羽賀にしてみれば「返す、返さないは俺の自由」であって、返さなければ利子は増えてゆくだろうが罪に問われることは無いと世間を舐め切っていたのだろう。