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 まさに、経済安全保障が脅かされる危機である。

 福井県越前市に本社を構える「APB」は、次世代型リチウムイオン電池である「全樹脂電池」の開発を手掛けている。

 全樹脂電池は従来のリチウムイオン電池と比べ、発火リスクが極めて低く、製造コストは4割減という画期的なシロモノだ。

 ところが、目下、APBの堀江英明社長は解任の憂き目に遭い、その革新的技術が中国に流出する危機に瀕している。

わずか10人の日産人「レジェンド」のひとり

 もともと、堀江社長は「日産」の技術者で、「日産人」のレジェンド10人に数えられるうちの一人。世界初の量産型EV(電気自動車)「リーフ」の車載電池を開発した人物として知られている。しかし、「ゴーンショック」に見舞われた日産がEV用車載電池の自社開発を断念したため、堀江社長は日産を飛び出し、2018年10月、APBを起ち上げた。

 その設立に当たって、紙おむつなどに使用される高吸水性樹脂を生産する「三洋化成工業」が最大の出資者となり、株式の44%を取得。ほかに、「JFEケミカル」、「横川電機」などからも出資を受け、APBは計13社から総額88億円を掻き集めた。

2020年3月、全樹脂電池を手に写真撮影に応じるAPBの堀江英明社長(右)と三洋化成工業の安藤孝夫社長(当時)=東京都中央区(写真:共同通信社)
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