社長側からの反撃

 ここに至って、堀江社長は取締役会の決議無効の訴えを起こすとともに、解任決議に賛成したO氏ら3人に対し、「特別背任」の疑いで、福井県警越前警察署に「告訴状」(今年7月9日付)を提出した。

 なぜ、特別背任なのかと言えば、資金繰りに窮したAPBが地元の「北國銀行」から受けるはずの10億円の融資を水の泡にしてしまったからだ。

 その融資スキームは、北國銀行のグループ会社であるQRインベストメントが無限責任組合員を務める「QR2号ファンド投資事業有限責任組合」(QR)を組成し、そこからAPBに融資が実行されるというものだった。一方で、融資には条件が付け加えられていた。それは、堀江社長が代表取締役であること、なおかつ、その任免はQRの事前承認を得なければならないことだった。即ち、O氏らによる「堀江社長解任」に至る行為はQRからの融資実行を妨げ、APBに損害を与えたとして、特別背任に問われる可能性が生じたのである。

 告訴状には以下のように記されている。

〈被告人ら(筆者注:O氏ら3人)は、告訴人(筆者注:APB)の利益を図るため、株式会社北國銀行からの告訴人に対する融資を実現させ、これを妨げてはならない任務を有していたのに、これに背き、(略)告訴人らの身分上の利益を図り、告訴人を害する目的をもって、(略)告訴人の取締役会なるものを開催し、QRの事前承認なく、被告人ら3名の賛成によって堀江英明の代表取締役解職決議を行い、(略)告訴人に対する10億円の融資実行の前提条件を充足させず、(略)告訴人が株式会社北國銀行から10億円の融資を受けることを妨げ、もって告訴人に同額の損害を加えたものである〉

 現在、福井県警だけでなく、T社の所在地を管轄する福岡県警も内偵捜査に着手し、さらには、警視庁の公安部も情報収集に乗り出した。

 全樹脂電池という革新的技術の中国への流出を黙っては見過ごせないとの構えのようである。