山本 各候補の政策はどうですか。党員の中にも、政策を見てだれに投票するかを決める人もいるはずです。

米重 投票行動に影響する政策としない政策があると思うんですね。たとえば選択的夫婦別姓は、世論調査では賛成が多いとはいえ、自民党総裁選で候補者が「私は選択的夫婦別姓を推進します」と言ったら離れる党員もいると思います。

(写真:小檜山毅彦)
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山本 小泉さんはよく夫婦別姓に賛成の立場を取りましたね。

米重 ふわっと小泉さんを支持していた党員の中には、それによって離れた人もいると思います。

山本 経済界の人々は、解雇規制や金融所得課税、それから金利の話に注目しています。

米重 市場参加者はアベノミクスの継続あるいは微調整くらいを望んでいる感じですね。その層は高市さんや小林さんに期待している。

山本 逆に石破さんは金融系の人からは不評ですね。石破さんが総裁になれば株価が暴落すると言っている人もいる。またスタートアップ企業からは、小泉さんの政策を支持する声が上がっています。

米重 ベンチャー界隈では小泉人気が爆発しています。

山本 陣営に入っている小林史明さんや村井英樹さん、小倉將信さんの影響もあるのかも知れませんね。

 ただ、経営者以外からは解雇規制の見直しは評判がよくない。小泉さんが党員票で伸び悩んでいると言われているのは、この政策を打ち出したからですか?

3人の“キングメーカー候補”

米重 報道各社の世論調査の中身を見る限りでは、解雇規制の見直しや労働市場改革といった争点が直ちに小泉さんを支持しない理由になっているとは思えません。どちらかというと私は、解雇規制の見直しという自分が設定したはずの争点で攻めきれず、その後、軌道修正をしたことが発信の説得力をなくし、首相候補としての資質を疑わせるようなイメージダウンになっているのではないかと思います。

 もともとは企業が社員を解雇しやすくするというニュアンスが強かったのに、途中から「個人が転職しやすくなるための労働市場改革だ」みたいな言い方に変わってきた。これを「変わっていない」と言い張るのは難しい。その争点で本気で勝負を仕掛けるつもりなら、最後までそこで妥協してはいけない。それなのにズルズル後退してしまった印象です。

山本 いずれにしても、9人の候補者がいる今回は決選投票までもつれるのは確実です。決選投票になると、党員票よりも議員票の比重が格段に高くなる。そこでいま必死に動いているのが、岸田文雄、菅義偉、麻生太郎という現・前・元首相です。この3人は間違いなくキングメーカーを目指している。

米重 ただ決選投票に行けるのは初回の投票で上位2人だけ。そこが誰になるか見えていないので、3人の“キングメーカー候補”も動きにくいでしょうね。

山本 そこはギリギリまで見極めるのは難しい。それだけに今回の総裁選は最後の最後まで何が起きるか分かりませんね。