山本 林さんの推薦人名簿を見ると、地域にしっかり根を張っている議員が多い印象です。また推薦人の半分が参議院議員というのも特徴的で、そのほとんどが選挙区選出。数名の比例区選出議員も強固な支持母体を持っている人です。つまり、末端の党員へアクセスしている人が多い。

 自民党員は職域支部の党員と地方支部の党員に分類できますが、地方のほうが人数が多い。そして地方の党員は地方議員に紐づいています。もちろん国会議員の支持者が自民党員になっている場合もありますが、市区町村議会議員や都道府県議会議員に紐づいている党員がたくさんいるわけです。そして市議会議員を束ねるのが県議会議員、その県議会議員を束ねるのが国会議員という構図です。

 だから今、自民党の国会議員は後援会の幹部や地方議員を集めて、「俺は総裁選では○○を推す、○○をよろしく」とやっているわけです。そこから地方議員から末端の党員にその意向が伝えられ、票固めがなされていっている。つまり陣営内に後援会や支持基盤に強いアクセスを持っている議員が多い候補に票が出るころになる。林さん陣営にはエリア性の高い議員が多いので、それなりの党員票を持っていると思います。これはすべての候補に言えますが。

「脱派閥選挙」の煽りを受けた河野氏

米重 なるほど。河野太郎さんの陣営はどうですか。

山本 河野さんは完全に「麻生派の候補」のイメージになっていますね。

河野太郎氏(写真:共同通信社)
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米重 最初に出馬表明をした小林鷹之さんが「脱派閥選挙をやる」という言い方をして、明らかに「脱派閥の総裁選」という文脈を作りました。そういう中にあって、河野さんが「派閥候補」と見られていることは党員の支持獲得にネガティブに作用している可能性は高い。

山本 ただ唯一存続する派閥である麻生派としては、誰も出さないという選択肢もなかった。

米重 いま河野さんは、ドラスティックな改革色、新自由主義的な主張をどんどん打ち出していますが、これは「自分こそが改革派だ、一番改革にこだわりがある候補なんだ」というアピールです。それによって小泉さんや石破さんに流れている「改革」や「刷新」を望む層を引き寄せようとしているのでしょうが、現時点ではまだうまくいっていない感じです。