シリコンバレーの神髄
管理職モードは、漸進的なイノベーションが普通で破壊的なイノベーションが例外的である比較的大きな企業に明らかに向いている。
恐らく、欧州企業の大半はこのモードが初期設定となっている。
もちろん、両方のモードの良いところだけを組み合わせるのが理想だ。
アマゾン・ドット・コムを立ち上げたジェフ・ベゾフ氏が書いているように、大きな企業の規模や能力と小さな企業の精神や柔軟性を兼ね備えている企業が理想なのだ。
変化の速いデジタル時代で生き残るためには、アマゾンのような巨大企業でさえ、実験的で顧客のことばかり考えていた創業時のメンタリティーを持ち続けなければならない。
その実践は難しい。
企業の規模が大きくなってインセンティブ(報奨)体系が変わっていく時、企業内の官僚主義や政治がからんでくる時、そして基本給やボーナスの方が自社株式よりも重要になる時は特にそうだ。
利益の最大化ではなくリスクの最少化が優先されるようになることが非常に多いからだ。
経済学者ジョン・メイナード・ケインズはこのことを次のように完璧に言い表した。
「型破りな成功を収めることよりも型にはまった失敗をする方が評判は高まる――それが世俗の知恵だ」
シリコンバレーの神髄は、型にはまった失敗を忌避し、型破りな成功が安全に行える空間を作ろうとするところにある。
もっと多くの企業がそのような創業者モードを再度受け入れる必要があるだろう。欧州においては特にそうだ。