「創業者モード」vs「管理職モード」

 それでも筆者自身は、破綻の恐れが強い事業に賭けることを厭わないシリコンバレーの姿勢に、何か励まされるような気がしている。

 破綻は避けるに越したことはないとの見方に、誰もが同意するとしてもだ。

 経済が発展するか否かはリスクを取ろうとする、そしてテクノロジーを新しい方法で用いて今までにない(時にクレージーな)ことをやろうとする大胆な人々の肩にかかっている。

 イタリアでは先日、マリオ・ドラギ前首相が欧州の競争力向上の方法を報告書にまとめて公表した。

 テクノクラートが考えた、すぐ実行に移す価値のある対策が数多く盛り込まれている。

 だが、ドラギ氏は文化の変化を、そしてより大きなリスクを取る起業を刺激するのに欠かせない「失敗に対する寛容さ」を強調するべきだった。

 欧州の政策立案者には、この報告書に比べればはるかに短い、テクノロジー投資家ポール・グレアム氏のエッセイが大いに参考になるかもしれない。

 グレアム氏は最近、スタートアップ企業の立ち上げ初期に見られる「創業者モード」なるものと、事業の拡大には「大人」が必要だと投資家が主張する時期の「管理職モード」を区別した。

 そして何人かの創業者と接した経験をもとに、前者から後者への切り換えを急ぐのは間違いであることが多いと論じている。

 リスクを執拗に取ったり実験したりする創業者モードに特徴的な文化を企業は維持する必要がある、というわけだ。