「そんなのは全部フェイクニュースさ」と鉄板支持者

 私が2020年の大統領選挙を1年かけて取材しようと思い立ったのも、このトランプという民主主義に敵対する“ジョーカー”のような大統領を、アメリカが再選させるのか否かを、現地に貼り付いて取材したいと思ったからだ。

 2020年11月の大統領選挙で、トランプはジョー・バイデンに敗北し、再選を果たすことはできなかった。

 敗因はどこにあったのか。

 それはトランプのつくウソが、最終的にはトランプ自身の首を絞めることになったからだ。私は、共和党の選挙ボランティアとして1000軒超の家を訪問したり、多くのトランプの支援者集会に足を運んだりして、そのことを確信した。

 戸別訪問で、40代の男性に話を聞いたのは20年春先のこと。

 70代の白人男性の家を訪ね、アンケートを取り始めようとしたところ、息子を名乗る男性が、私たちの間に割り込んできた。

「なんだって、ミシガン共和党のボランティアだって。ならば、オレがアンケートに答えてやるよ」

 そう、挑みかかるように言う。赤のトランプの帽子を被り、迷彩柄のTシャツにもトランプの文字が入っていた。

「もちろん、トランプを支持するよ。投票方法だって? 選挙日当日に自分で投票するに決まっているじゃないか。郵便投票なんて不正の温床だって、トランプが言っているだろう。あれはダメなんだ。

 オレは共和党員じゃない。無党派としてトランプを支持しているんだ。なぜかって? トランプはこれまで、オレたちみたいな労働者のために、多くの約束事を果たしてきてくれたからだよ。経済状態は最高だろう。株価は右肩上がりだ。白人ばかりか、黒人やアジア系の失業率も史上最も低いんだぜ。選挙で、トランプが苦戦しているなんて言っているメディアもあるが、そんなのは全部フェイクニュースさ」