20年3月の新型コロナによる非常事態宣言以降、その対策として、郵便投票が広がることになったが、トランプは郵便投票が不正の温床になり、選挙が盗まれることになる、と誤った主張を繰り返してきた。

 男性の主張は、トランプのウソをなぞったものだった。

 しかし、こうした鉄板支持者に、事実確認は通用しない。知りたい情報だけを、ネットやSNS、極右のメディアから収集するが、それが事実であるかどうかについては、関心を示さない。

 自分たちの都合のいい情報だけに囲まれて生活している。彼らはネット上でフィルターバブルに囲まれたエコーチェンバーの中に隔離されているので、耳の痛い事実は届かない。

 彼らが大事にするポイントは、大統領であるトランプが発信する情報がウソであるはずがない、というもの。彼らとどれだけ事実について話し合っても、議論は平行線をたどるだけ。ファクトチェックで事実を繰り返し突きつけても、鉄板支持者がその考えを変えることは一度としてなかった。

鉄板支持者はトランプ氏の主張が事実がどうかについて関心を示さない傾向にある(写真:ロイター/アフロ)

「ニュースのほとんどはフェイクニュース」

 トランプのウソは、鉄板支持者の団結を固めた。

 その典型ともいえるのが、退役軍人のエドワードだった。話を聞いたのは、新型コロナが猛威を振るっていたころの支援者集会でのこと。

「新型コロナによる死者が17万人を超えるだって、それはウソだよ。CDC(米疾病対策センター)の発表だって? そりゃフェイクニュースだ。交通事故で死んだのに、新型コロナによる死亡者と数えられた例もあっただろう。今、発表されている数字は、実際より大きな数字になっている。なぜかって? 経済的な打撃が大きいほど、トランプの再選に不利に働くからさ」

 エドワードは、こちらの当惑顔に気が付いたのか話を続ける。