RWDとAWDで差がないシールの全装備

 レビューの前にシールの概要を紹介する。車体寸法は全長4800mm×全幅1875mm×全高1460mm、ホイールベース2920mm。昨今はやりのクロスオーバータイプではなく、全高を低く抑えたオーセンティックなトランク独立型4ドアセダンである。

BYDシールAWDのサイドビューBYDシールAWDのサイドビュー。全高は1.4m台と低い。低重心が生むドライブフィールや揺れの小ささは長距離ドライブを楽しいものにした(筆者撮影)

 クラスはノンプレミアムDセグメント、すなわち「大衆中型車」に区分される。車両重量は2100~2210kgとかなりのヘビー級。サスペンションは前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンクの4輪独立。

前後ドア開口部は長さ、高さとも十分で乗降性は良好だった(筆者撮影)
ドアハンドルはリトラクタブル式。キーをアンロックすると自動的に出てくる(筆者撮影)

 駆動方式はRWD(後輪駆動)とAWD(4輪駆動)の2種類がある。後輪用駆動モーターは両者共通で、最高出力230kW(312馬力)の永久磁石モーター。AWDは前輪にも160kW(217馬力)の誘導モーターが備わり、前後独立でパワーを制御する電動AWDとなっている。

 バッテリーは正極にリン酸鉄を用いたBYD独自の板状大型セル「ブレードバッテリー」。セルの電圧は3.2V、それを172個直列つなぎすることで総電圧550Vを得ている。容量は82.56kWhと、航続距離の確保のためかなりの余裕を持たせている。

前席。このクラスでは珍しくヘッドレスト一体型のバケット形状だった(筆者撮影)
後席は大変広い。床下にバッテリーを積む低車高BEVであるにもかかわらず頭上空間にもゆとりがあった(筆者撮影)

 急速充電は日本の急速充電規格CHAdeMO(チャデモ)に準拠。今日では同規格の800V充電器が配備されていないためいったん420Vで電気を受け入れ、車両側で昇圧するというプロセスを取っている。また輸入車としては珍しく、電力を住宅と融通し合うV2H(Vehicle to Home)に対応している。

 装備はADAS(先進運転支援システム)、カーナビやSpotify、Android Autoなどを表示する15.6インチ大型ディスプレイ、ベンチレーター機構付きのナッパレザーシート、DYNAUDIO(ディナウディオ)製音響システムなどがすべて標準という1パッケージで追加装備メニューはない。

テスラ「モデル3」と異なり、ステアリングコラム上にインフォメーションディスプレイが設置される。瞬間出力や回生量が数字で表示されるのが特徴的(筆者撮影)

 前後モーターのトルク差で車両の姿勢や揺れを制御するシステムと後サスペンションの可変ショックアブソーバーを除き、RWDとAWDの間で装備差はない。

 今回のロードテスト車は高性能タイプのAWD。試乗ルートはBYDオートジャパンの本社がある横浜~筆者の郷里・鹿児島間の周遊で、往路、復路とも本州は東海道および山陰経由、九州は門司から佐賀、有明海沿岸から内陸の人吉を回って鹿児島に達する西海岸コースを取った。

 総走行距離は4168.5km。乗車人数は本州が1~2名、九州内が1~4名。全区間エアコンAUTO。

BYDシールAWDBYDシールAWD(兵庫北部、朝来市郊外の播但連絡道路橋梁下にて/筆者撮影)