通貨ペソ急落に見る投資家の不安

 金融市場にもストレスが生じている。

 通貨ペソは6月2日のメキシコ大統領・議会選以来、12%近く下落した。高利回り通貨に投資する、かつて人気だった「キャリートレード」の巻き戻しが進んだからだ。

 投資家は、ロペスオブラドール氏の改革案が米国やカナダだけでなく、欧州連合(EU)やアジアとの貿易協定にも違反すると懸念している。

 これは本来メキシコの切り札であるはずのものを使う能力を損なう。

 製造業者が中国から自国の近くへ工場を移転させたいと考えている時に、米国と距離的に近いメキシコの地の利だ。

 米ゴールドマン・サックスの中南米担当チーフエコノミスト、アルベルト・ラモス氏は「メキシコの目の前には絶好の機会がある。ニアショアリングとフレンドショアリングがそれだ」と話す。

「それなのに、彼らはそれを台無しにしている」

 「(チャンスをつかむ代わりに)我々は市場に影響を与え、不確実性を生み、投資を損なう恐れがある米国との潜在的な対立、摩擦への道のりを歩んでいる」

 メキシコの中央銀行は8月末、2024年の経済成長率の予想を従来予想の2.4%から1.5%に引き下げた。