昨年末から始まった政治とカネの問題で支持率が急降下した岸田政権は、間もなく終わりを迎える。一連の流れを作ったのは、2022年11月の「しんぶん赤旗日曜版」によるスクープ報道だった。
記事の中でコメントを求められた上脇博之・神戸学院大学法学部教授は、自らも調査に乗り出し、自民党の各派閥における政治資金規正法違反を次々と暴いて告発した。その後、2023年12月に朝日新聞が裏金問題をスクープしたことを契機に、東京地検特捜部が捜査に乗り出している。
巨大なスキャンダルを受け、今年6月には改正政治資金規正法が成立したが、この問題を追いかけてきた当事者は今何を思うのか。『検証 政治とカネ』(岩波書店)を上梓した市民団体「政治資金オンブズマン」代表も務める上脇博之氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──6月19日の参院本会議で可決・成立した改正政治資金規正法に、どのような印象をお持ちですか?
上脇博之氏(以下、上脇):全く評価できません。マイナス点に近いといってもいいと思います。企業には収支報告制度はありませんから、政治資金パーティーのパーティー券を買ったかどうかは誰にもチェックできません。
政治資金パーティーを禁止するか、企業や任意団体がパーティー券を買うことを禁止しないと裏金を取り締まることはできません。裏金を作る道を残している。パーティー券に限らず、企業・団体献金も禁止しなければならないのに、禁止していません。
──本書では、政治資金パーティーについて多くのページを割かれています。
上脇:政治資金パーティーを行う場合には、案内状に「これは政治資金規正法に規定されるところの政治資金パーティーです」ということを明記しなければなりません。パーティー券を購入した方に対して、政治活動に購入費が使われることを知らせるためです。
パーティー券は誰でも購入することができますが、寄附とパーティー券の購入は法律で区別されています。政治資金パーティーの場合は、参加者に食事や講演を提供するなど、一定の対価を支払う必要がある。一方で、寄附にはそうした対価は必要ありません。
企業は政党に寄附をすることができます。でも、派閥や国会議員の政治団体に寄附はできません。そこで、政治資金パーティーを活用する。多くの場合、たくさん出してくれるのは企業ですから、政治家は企業にたくさんパーティー券を買ってほしい。
50人分ほどのパーティー券を購入する企業もあります。でも、本当に50人が参加したら、その会社は仕事になりません。だから暗黙の了解で、実際には1人か2人しかパーティーに参加しません。
それから、東京で開催される政治資金パーティーなのに、地方の企業や政治団体がパーティー券を買っていますが、わざわざ地方からみんなが出てくるわけがありません。
つまり、実際の参加者は少ないので、パーティー券が売れるほど、かかる経費の割合は少なくて済む。利益率は80%から90%です。一晩でぼろ儲け。事実上の政治献金を企業から受け取りたいがために、政治資金パーティーの形式で大量にカネを集めるのです。
──なぜ企業はパーティー券を購入するのでしょうか。パーティー券を購入すると、本当に見返りが期待できると思われますか。