政治資金パーティー以上に悪質な催し

上脇:私が聞いたところでは、「否が応でも買わされる」という場合があるようです。政治家は力を持っています。「お宅の会社の従業員はちゃんと私に投票してくれましたか?」などと聞いて、その会社の投票の内実を報告させる政治家までいます。

 なぜそのような上下関係が発生するのかというと、よく話題になるのは貢献を見せないと公共事業から排除されかねないという点ですが、パーティー券の購入も同じで限りなく強制に近い。否が応でもパーティー券を買わなければなりません。

 大きな企業に多いようですが、「多少払うことで公共事業が取れるなら安いもの」とむしろ積極的にカネを出す企業もあります。中小規模の子会社や孫会社などは、本当は出したくないのだけれど、声がかかると買わざるを得ないという会社が多いと思います。

 その他に、業界団体系の政治団体が、パーティー券を買ったり、寄附したりする場合もあります。

──厚労大臣の武見敬三氏が、2011年に開催した「オンライン・パーティー」についても本書では触れられています。

上脇:これは政治資金パーティーの一種ですが、総務省はこの時の「オンライン・パーティー」を「政治資金パーティーではない」と説明しています。ビックリですね。

 パーティー券を購入した「東京都医師政治連盟」や「日本医師連盟」などの政治団体の収支報告書には、「パーティー券購入」の名目で敬人会(武見氏が代表を務める政治団体)に対して支出していることが記録されています。

 ところが、武見氏は「どこかに集まって、対面でやっていないから催し物には当たらない」「政治資金パーティーではない」と説明しています。催し物とはみんなが集まることだという説明です。東京地検特捜部も同じように解釈しています。その結果、何が起こるかというと、収入や支出の明細を書かなくてよくなりました。

 政治資金パーティーの場合、総収入、かかった経費、20万円を超えてパーティー券を買ってくれた人などは明細を書かなければなりません。加えて、政治資金パーティーの場合は、1人150万円までしかパーティー券を購入できません。これは個人であれ、会社であれ、政治団体であれ変わりません。しかし、政治資金パーティーでないとなると、その上限もなくなる。

 武見氏は飲食もないのに、参加者から1人あたり2万円を取っています。政治資金パーティーであれば、名刺交換などの意味合いもありますが、オンラインの場合はそうした効果さえない。会費を出す側からすると、踏んだり蹴ったりです。

 あまりメディアでは注目されませんでしたが、オンライン・パーティーは政治資金パーティー以上に悪質です。

「裏金を想起させる」との指摘も出た自民党総裁選のポスター(プロレス風)。中央には安倍元首相、脇を固める田中角栄氏に小泉純一郎氏。なぜか現職の岸田首相の扱いは小さい(写真:共同通信社)「裏金を想起させる」との指摘も出た自民党総裁選のポスター(プロレス風)。中央には安倍元首相、脇を固める田中角栄氏に小泉純一郎氏。なぜか現職の岸田首相の扱いは小さい(写真:共同通信社)