金融所得課税強化の是非が自民党総裁選の争点として浮上しています。元幹事長の石破茂氏が課税強化を訴えたところ、元環境相の小泉進次郎氏やデジタル相の河野太郎氏らが反対を表明しました。議論はその後も続いていますが、金融所得課税の強化案そのものは岸田文雄首相が2021年の総裁選で提唱し、各界の反対で頓挫した経緯があります。その政策がなぜ再浮上しているのでしょうか。そもそも金融所得課税とは、どのような仕組みになっているのでしょうか。やさしく解説します。
石破氏発言に小泉氏、小林氏らが反対
金融所得課税の強化について、真っ先に声を上げたのは石破茂氏でした。2024年9月2日、BS日テレの番組「深層NEWS」に出演し、次のように述べました。格差是正を念頭に置いての発言です。
「(株式の売却益などへの金融所得課税の強化について)それは実行したい。お金持ちが本当に(日本の)外に出て行ってしまうのかという議論を詰めていかなければいけない」
この発言は大きなニュースとなって伝わると、総裁選に出馬を表明していた自民党の有力者から次々と見解を表明しました。主な発言を見てみましょう。
◎小泉進次郎氏
「貯蓄から投資へと、長年なかなか回らなかった歯車が動き出した。この流れに水を差すような金融所得課税を議論するタイミングではない」(9月3日、訪問先の東京都内の介護施設で)
◎前経済安全保障相の小林鷹之氏
「今は増税ではなく、中間層の所得をどうやって増やすのかに重点を置くべきだ」(9月3日、自民党本部で)
「これまでの取り組みに逆行」「中間層に対する増税」(同、SNS「X」への投稿)
◎幹事長の茂木敏充氏
「(金融所得への課税強化は)正しい方向性とは思わない。『貯蓄から投資へ』という流れに逆行する」(9月4日、立候補表明の記者会見で)
いずれも、金融所得課税の強化に反対、あるいは慎重姿勢を示す内容でした。石破発言に賛同する者は誰もいない状態です。このため、石破氏は「新NISA(少額投資非課税制度)、iDeCo(個人型確定拠出年金)で所得を上げていく方々に課税強化するなどということは毛頭考えていない」(9月3日、国会内)などと発言。“石破総裁になれば増税が始まる”といった見方の打ち消しを進めました。
石破氏はまた記者団に対し、「いかに公正な税制を実現するか。手法はいろいろ議論がある」と言及し、議論の対象として「超富裕層」を挙げました。年間所得が30億円を超す超富裕層は、200〜300人いるとされています。