様々な手が打たれてのこの現状

 どうだろうか。改めてこうした客観的な数字を少し取り上げただけでも現代日本社会における明確な男女格差の存在に慄然とする。

 というのも、この間、特に2010年代以後に「働き方改革」や長く懸案事項と考えられてきた待機児童対策などの様々な政策が取り入れられてきたにもかかわらず、この現状だからだ。本稿の簡潔な検討では取り上げていないが、就労環境以前に教育や社会環境に格差を支える構造が十分に改善されないままに放置されている。

 もちろんほとんどの「改革」の成果は緩やかだと、したり顔で述べることは容易だ。他方で、いま、まさに困難な状態に置かれている人や職業選択の節目に立っている人が多く存在することを想起するなら、より強力な介入、改革が必要に思えてこないだろうか。

 現状に対する積極的な対症療法的介入を行いながら、就労習慣の変更なども含めた抜本的な改革を検討してもよいはずだ。
 
 いま政治の文脈で我々が目にしているのが、事実上、次の総理大臣を決める自民党総裁選であり、野党第一党の代表を決める立憲民主党の代表選挙である。

 そこでこうした問題はきちんと取り上げられているのだろうか。管見の限り、自民党総裁選においても、立憲民主党の代表選においても不十分だ。

 むろん本連載でも幾度か取り上げてきたように、世論の政治とカネの問題に対する根強い怒りと、ようやく重い腰をあげて自民党総裁選候補者らのあいだでも政策活動費の廃止など政治改革に言及が始まった千載一遇の好機であるだけに、筆者も政治改革が迫る国政選挙なども含めて中心的主題となるべきだと考えている。

自民党総裁選、小林鷹之氏の出馬表明に欠けていた“刷新”の具体策…改革なき総裁選で再びよぎる「自民一強」の終焉 【西田亮介の週刊時評】まるで往年のプロレス興行?な総裁選ポスター、注目度は高いが…… | JBpress (ジェイビープレス) 

岸田首相、捨て身の“禊”アピールを国民はどう受け止める?自ら塞ぎ損ねた「政治とカネ」疑惑、旧態依然の曖昧戦略 【西田亮介の週刊時評】「選挙の顔」を変えたい、まるで昭和な自民党 | JBpress (ジェイビープレス)

 しかしここまで見てきたように、男女間の格差、なかでも生活全般に広く影響し、また長く顕著な改革が進まないまま放置されている賃金格差の是正をはじめとする諸問題の解決への言及もなされるべきだ。

 筆者の認識では少なくともここまでの総裁選出馬記者会見においては、小林鷹之、石破茂、林芳正、茂木敏充の各氏はこうした男女の経済格差の是正に関する明確な言及は行っていない(なお、石破、河野、林の各氏は選択的夫婦別姓については肯定的な発言をしている(他は否定的か、言及なしか不明確))。

 河野太郎氏は9月5日の政策発表記者会見において、男女の賃金格差解消と同一労働同一賃金、ジェンダー問題に言及している。

 今後、論戦が本格化していくなかで、こうした問題への言及が深まるのか注視すべきで、また立憲民主党の代表選においてより注目に値する議論や提案がなされるのかも気になるところだ。