「方言=カッコ悪い」という空気感

 とてもびっくりした半面、「カッコいい」との反応は素直にうれしいものだった。

 一方で、「方言=カッコいい」と認識されたことさえも「意外」だと感じてしまったことは否めない。わたし自身は方言をカッコ悪いと思わないが、テレビなどでは方言が忌避される空気感があまりにも充満しているからだ。

 今年1月には、沖縄県出身の俳優が「方言禁止記者会見」に挑戦するという内容のバラエティ番組が放送され、物議を醸した。かつて琉球王国が強制的に日本に併合された際、沖縄の人々が方言を禁じられて差別を受けた「方言札」の歴史を想起させる、などとして批判の声があがったのだ。

かつて沖縄などでは、学校で標準語でない言葉を話した生徒は、見せしめのため首から「方言札」を掛けさせられた。写真は沖縄県・竹富島に残る方言札(写真:共同通信社)
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 この件はSNSなどで様々な意見が飛び交い、新聞などが話題として報じるに至ったが、そこまで至らないケースでもいくつかある。

 例えば3月には、たまたまテレビをつけた時に目に飛び込んだ「関西人と東京人対決」のようなバラエティ番組で、あるタレントが関西勢に対し「そもそもなんで、関西弁を直さないのか」といった投げかけをしていた。

 方言は矯正を強いられるようなものなのだろうか。以前取材した広島出身のアナウンサーが「広島弁が抜けなくて苦労した」と言っていたが、全国の人たちにわかりやすくニュースを伝える仕事であれば、いわゆる「標準語」といわれる言葉で平易に読むことが求められるのはわかる。

 だが、そうでないようなコミュニケーションの中で、方言を直すことが強要されるのは納得がいかない。そもそも「標準語」とは「共通語」でしかないと思うのだが……。

2010年8月、中国の広州市では、地元の人民政治協商会議が地元テレビの広東語チャンネルを標準語に改めるべきと市側に提案した結果、地元住民が「広東語を守れ」と反発、大規模なデモ活動が行われた(写真:ロイター/アフロ)
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