ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は20日「作戦上および戦略上の状況は依然困難だ。長さ約1040キロメートルの前線の一部で戦闘を行っている」と説明。クルスク州への侵攻は28〜35キロメートル前進、93集落を含む1263平方キロメートルを占領したという。

ロシア軍のMi-8ヘリを小型ドローンで撃墜

 シルスキー総司令官はクルスク州侵攻作戦について「安全な緩衝地帯をつくり、ロシア領からの砲撃を阻止、敵を出し抜くことを目的として実施されている」と語る。15日にはエドゥアルド・モスカリョフ少将を司令官とする軍司令官事務所をクルスク州に設置した。

 シルスキー総司令官は「クルスク州におけるウクライナ軍の前進は、ロシア軍がウクライナの前線からクルスク州に不特定部隊の一部を再配置するよう圧力をかけている。ウクライナにおけるロシア軍の攻勢のテンポや見通しに影響を与える可能性がある」と位置づける。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も19日「積極的で予防的な防衛はロシアのテロに対する最も効果的な対抗手段であり、侵略国家に大きな困難をもたらしている。スームィ州の国境地帯からロシア軍をほぼ排除したことは作戦目標、戦術目標の一つ」と述べた。

 旧態依然とした閉鎖的な体質を引きずるクレムリン、ロシア軍・情報機関は戦場の変化についていけない。英紙デーリー・テレグラフ(8月2日)は22億8000万円もするMi-8医療救護ヘリが7月31日、ウクライナ軍の小型ドローンによって撃墜されたという未確認情報を伝えている。

ロシア軍の軍用ヘリコプターMi-8(写真:AP/アフロ)
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ヘリを撃墜するのにドローンが使われるのは想定外

 前線から50キロメートル近く離れたロシア支配地域のドネツク州で、爆発物を搭載したドローンが離陸するヘリにぶつかり、墜落・炎上させ乗員全員が死亡。ウクライナ軍側の操縦者はバーチャルリアリティヘッドセットを使ってクアッドコプター型ドローンをターゲットに誘導したとみられている。

 ウクライナ軍がドローンを使ってロシア軍ヘリを攻撃する実験を始めたのは昨年9月のこと。キーウ・インディペンデント紙は今月7日、ウクライナ軍のドローンが露クルスク州上空でロシア軍Mi-28攻撃ヘリに命中したとウクライナ保安局(SBU)筋の話として報じた。