「高齢者犯罪」が増加している(イメージ写真:FotoDax/Shutterstock.com)

 国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)を迎える2025年。そんな超高齢化社会が進行する中で、危機的な状況が現実となりつつある。高齢者の犯罪が頻発しているのだ。80代の男性の不同意わいせつ容疑、88歳と70歳の男性コンビによる空き家窃盗など連日のようにシルバー犯罪が報じられている。団塊世代が後期高齢者に突入する中、超高齢者犯罪の実態はどうなっているのか。そして、その背景には何があるのか──。ジャーナリストの山田稔氏が探った。

シリーズ《2025年問題の衝撃》ラインアップ
2030年に3万6000人不足する路線バスの運転手、減便や廃止で住民生活は大パニックに陥る!(2024.4.30)
相次ぐ「病院倒産」で崖っぷちの医療現場、医師不足や偏在のシワ寄せは患者に(2024.5.10)
全国各地で「人手不足倒産」や「後継者難廃業」が続出、このままでは外資に食い尽くされる!(2024.5.17)
全国で22万人の職員が不足する介護現場、「超老老介護」や「ヤングケアラー問題」も深刻化(2024.5.31)
■窃盗からわいせつまで「超高齢者犯罪」が頻発するシルバー危機社会の深刻度(本稿)

高齢者犯罪に占める70歳以上の割合は「77.4%」

 総人口1億2396万人の約3人に1人を高齢者が占める日本社会。その内情は「65歳以上3626万人(29.2%)」「75歳以上2062万人(16.6%)」「85歳以上675万人(5.4%)」となっている(概算値)。これが2024年7月1日時点での日本社会の高齢化の実態だ。

 高齢化が急速に進む中で、高齢者による自動車暴走事故や認知症患者増加の問題が盛んにクローズアップされてきたが、もう一つ見過ごすことのできない大きな問題が表面化してきている。高齢者が加害者となる「高齢者犯罪」の増加である。

 6月最終週から7月上旬にかけ、70代、80代男性による犯罪が相次いで報じられた。

〈88歳と70歳の男2人 空き家からウイスキーや現金盗み窃盗などの疑いで逮捕─北海道・江別市/6月29日〉
〈路上でいきなり20代女性の胸を触る 78歳の男不同意わいせつの疑いで逮捕─札幌市/6月29日〉
〈同意なく60代女性の体を触り83歳の男を不同意わいせつの疑いで逮捕─新潟県阿賀町/7月1日〉

 そして7月23日には、石川県で70代の男性が22日に勤務先の女子更衣室にスマートフォンを動画撮影状態にして設置し、同じ会社の女性を盗撮したとして逮捕されていたという事件が発覚した。

 総人口に占める高齢者の比率が高まれば、犯罪が増えることも当然想定される事態だが、実際のところはどうなっているだろうか。法務省が毎年発行している「犯罪白書」の最新版である令和5年版で検証してみよう。

 高齢者の刑法犯検挙人員及び65歳以上が占める高齢者率を見ると、高齢者の検挙人員は平成20年(2008年)の4万8805人がピークで、その後高止まりから減少に転じ、令和4年(2022年)は3万9144人だった。

 しかし、70歳以上は平成23年(2011年)以降、検挙数が増え続け、令和4年は3万283人、なんと高齢者全体の77.4%を占めるまでになった。

 また、全ての検挙人員に占める高齢者率は、他の年齢層の多くが減少傾向にあることから、ほぼ一貫して上昇し、令和4年は23.1%となった。およそ4件に1件が高齢者犯罪ということになる。

超高齢ドライバーによる自動車事故やひき逃げ事件なども後を絶たない(イメージ写真:Roaming Freeman/Shutterstock.com)