東京都庁7月7日に投開票が行われる東京都知事選挙(写真:つのだよしお/アフロ)

 選挙ポスター問題などさまざまな課題を投げかけながら東京都知事選は最終盤を迎えようとしている。今回の選挙では「少子化対策」がひとつの争点と言われているが、このテーマは実に厄介な問題をはらんでいる。東京だけの課題ではないだけに誰もが納得できる解がない。東京の人口問題を追いかけているジャーナリストの山田稔氏が検証する。(JBpress編集部)

「出生数」の数値目標がなく説得力に欠ける公約

 まずは選挙公報で目に付いた何人かの候補の少子化対策関連の公約をチェックし、その一部を抜粋(名前の表示は選挙公報記載のもの)してみよう。

【小池ゆりこ候補】
「保育の第一子無償化など子育て教育施策の無償化と所得制限撤廃を推進」
【蓮舫候補】
「現役世代の手取りを増やす─本物の少子化対策」
【安野たかひろ候補】
「未来世代 世界一の教育環境 出産・子育てインフラの整備」
【清水国明候補】
「小池都政こども政策を継続 病児保育施設の増設」

 すべての候補の公約を挙げるわけにはいかないので、ごく一部を取り上げたが、いずれも内容的には異論はないものばかりだ。これらの施策内容を整理すると「無償化」「収入増額」「子育てインフラ整備」が柱になりそうだ。子育て世代や出産を考えている夫婦にしてみればどれも実現してほしいものばかりだろう。

 しかし、現実的な政策として検証した場合、どの候補も数値目標に言及していない点が不十分と言わざるを得ない。

 例えば、東京都の合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)0.99がクローズアップされた令和5年の人口動態調査によると、東京都の年間出生数は8万6347人(都区部は6万2459人)で、9万1097人だった前年に比べると4750人の減少となっている。

 この状況をどう改善するのか。各候補の政策を実現したときに、年間の出生数はどれだけ増えるのか。数値への言及がないと説得力に欠けると言わざるを得ない。