内部告発者を守る法律の要件は?
日本では、内部告発者を守ろうという動きは2000年代に入って本格化しました。2004年には公益通報者保護法が成立(施行は2006年)。その後、2022年に大幅な改正が行われ、現在に至っています。
日本の公益通報者保護制度の立脚点も、欧米とほぼ同じです。自分の属する企業や役所に重大な不正がある場合、それを是正するという「公益」のための通報は、積極的に保護すべきだという考え方です。
組織ぐるみや上層部主導で不正が行われている場合、面と向かって上司や同僚らに訴え出ても効果はなかなか見込めません。逆に、訴え出た者が降格や左遷、減給などの不利益を被るケースも出てきそうです。公益通報者保護法は、そうした告発者を「公益通報者」とし、法律によって守らなければならないとしています。
では、法律の要件はどうなっているのでしょうか。
公務員を含む労働者(パートタイム労働者や派遣労働者、取引先など)あるいは退職から1年以内の労働者、役職員が、事業者の違法行為について、組織内の通報窓口や事業者の監督機関、報道機関などに通報することを公益通報と規定しています。組織を混乱させるためなど不正な目的による通報は、保護の対象になりません。
一方、公益通報が行われた場合、事業者側は通報したことを理由に通報者を解雇することはできません。解雇してもそれは無効です。また、降格や減給、退職金の不支給、意にそぐわない配置転換なども禁止されています。公益通報によって損害を受けたからといって、通報者に損害賠償を求めることもできません。
従業員300人以上の事業者には組織内に内部通報制度を整え、公益通報の窓口を整備することが義務付けられています。窓口担当者には守秘義務が課せられ、違反した場合には刑事罰があります(30万円以下の罰金)。