内部告発者の保護、きっかけはチャレンジャー爆発事故
市民の安全や健康を脅かす恐れのある不正を組織の内側から告発すること。これが「内部告発」です。内部告発には本来、企業や組織の不正をただし、よりよき社会をつくるというプラスの要素が含まれていますが、ムラ社会的な因習が残る日本では内部告発を「組織への裏切り」「チクリ」などと称し、遠ざける傾向が長く続いていました。
社会のプラスになる内部告発者は適切に保護されなければならないという動きは、1980年代の米国で始まりました。大きなきっかけは1986年に起きたスペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故だったとされています。
シャトルに据え付けられた部品の欠陥を部品メーカーの技術者が事前に指摘したところ、会社の圧力で退職に追い込まれました。そして欠陥箇所が修理されることなく、チャレンジャーは打ち上げられ、大惨事を招いてしまったのです。
事故から3年後の1989年、米国では連邦法の「ホイッスル・ブロワー法」が成立し、内部告発者を保護する包括的な制度が出来上がりました。ホイッスル・ブロワーとは、社会に向かって笛を吹く人、すなわち警鐘を鳴らす人を意味する言葉です。
また、英国でも1998年に同じ狙いの法律が制定され、内部告発者に不利益を与えてはいけないという考え方が浸透していきました。