いまや中国は太陽光発電パネルの生産量で世界市場をリードする存在だ。ダンピング認定などの障害を乗り越え、低価格で高品質な製品を短期間で提供できるようになったのは、膨大な国内市需要があることと、先進的なデジタル技術による発電施設の効率的運営によるものが大きい。(JBpress)
※本稿は『チャイナ・イノベーションは死なない』(李智慧著、日経BP)より一部抜粋・再編集したものです。
世界最大のエネルギー消費国の中国は、経済発展と環境保全のバランスを取るため、再生可能エネルギーの普及に力を注いでいる。特に、太陽光発電はその中でも重要な位置を占め、この10年間で急速に普及が進んでいる。
国家エネルギー局によると、2023年1月から9月までの太陽光発電の設備容量は5億2018万キロワットで、中国全土の発電設備容量の18.7%を占め、前年同期比45.3%増となった。
これは三峡発電所の設備容量(2250万キロワット)の約23個分に相当し、一般的な大型原子力発電所の出力100万キロワット換算で520基分に匹敵する。
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太陽光発電のコストは10年前より80%も低下
導入が拡大した要因は、太陽光発電の大幅なコスト低下にある。中国ではこの分野の研究開発が活発に行われ、2021年時点で太陽光発電の特許出願件数は世界の80.14%を占めた。
中国は太陽光発電パネルの生産量で世界をリードし、低価格かつ高品質な製品を提供している。その結果、太陽光発電のコストは10年前より80%も低下した。日照時間が長く、施工費用の安い内モンゴル自治区や青海省などでは、キロワット時当たり約0.2〜0.3元(約3.2〜4.8円)まで下がっている。
中国メーカーは世界最高のコスト競争力と、世界最大の国内市場を背景に市場を席巻してきた。国際エネルギー機関(IEA)によれば、太陽光発電に必要不可欠な太陽光パネルの大半が中国で製造されている。「中国は世界の太陽光電池の85%、太陽光電池用ポリシリコンの88%、太陽光電池の中核であるシリコンインゴットとシリコンチップの97%を生産している」と報告している。
中国は短期間のうちに太陽光発電分野での主導的地位を獲得している。2005年頃は欧州がこの分野を主導し、世界の太陽光発電装置の5分の1をドイツが占めていた。しかし、SPVマーケットリサーチのデータによると、2022年には中国メーカーが世界シェアのトップを独占し、米ファースト・ソーラーがようやく10位に食い込んでいる。
2022年の国別出荷量シェアを見ると、1位は中国で全世界出荷量の71%を占めている。大差で2位マレーシア、3位ベトナムとなっている*1。
*1 日経XTECH「世界・太陽電池出荷量、シェアトップ5社は? 前年比46%増」(Junko Movellan、2023年6月6日)
砂漠に巨大な太陽光発電所を建設
クブチ砂漠は、オルドス高原の北、内モンゴル自治区の黄河の南岸に位置し、面積は1万8600平方キロメートルに及ぶ北京に最も近い砂漠である。この砂漠の中に中国最大のダラト太陽光発電所が建設された。