(英エコノミスト誌 2024年6月22日号)
エネルギーの豊富な未来が手の届くところまで来た。
米国の電話会社AT&Tのベル研究所が太陽光を電力に変える新技術を公表してから70年になる。
この技術を使えば人里離れたところに設置した機械を電池なしで運用できるかもしれないと同社は期待した。
また、光だけで機械を動かすことができれば、科学のおかげで未来がとても素晴らしいものに映る可能性があることも分かっていた。
そのためメディア向けの発表会では、太陽の光でおもちゃの観覧車をずっと回転させていた。
太陽光発電がおもちゃの域を脱して久しい。
今では太陽光発電パネルが英ウェールズの面積のおよそ半分を埋め尽くすほどに普及しており、太陽光による今年の発電電力量は、すべての電源の世界合計の約6%を占めるに至る。
これは1954年の米国で消費された電力のほぼ3倍に当たる量だ。
しかし、この歴史的な成長は、太陽光発電の台頭において2番目に目を引くポイントでしかない。
最も目を引くのは、その成長が終わる気配が全くないことだ。
10年ごとに10倍になる驚異的な成長
太陽光発電の成長を「指数関数的」と形容するのは決して誇張ではなく、事実そのものだ。
太陽光発電の設備容量はほぼ3年おきに倍増しており、10年ごとに10倍になっている計算だ。
このような成長が続くことは、ささいなものを除けばめったにない。おかげで世間の人々は、何がどうなっているのかよく分からなくなっている。
今から10年前、太陽光発電の設備容量が今日の10分の1だった頃には、この技術が急拡大してきたことを知っていた専門家たちでさえ、太陽光発電を非主流の技術と見なしていた。
今日の設備容量が再び10倍になれば、それは世界の原子力発電所の設備容量の合計を8倍するに等しい。しかも、原子炉1基の標準的な建設期間より短い時間でそれが達成できてしまうのだ。
2030年代までには太陽光発電が世界最大の電力供給源になると見てほぼ間違いないだろう。それどころか、2040年代までには世界最大のエネルギー源になっているかもしれない。
現在のトレンドが続けば、すべてを網羅した太陽光発電の発電コストは、今日現在で最も安い電力供給源のコストの半分以下になりそうだ。
実際にそうなっても気候変動を止めるには至らないだろうが、その進行をかなり遅くすることはできるかもしれない。
そして、世界の大部分が――自宅に電灯をつけることができない人が6億人いるアフリカも含めて――エネルギーが豊富に利用できるという感覚を覚え始めるだろう。
その新しい感覚は、人類に劇的な変化をもたらすことになる。