(英エコノミスト誌 2024年6月1日号)

皆で集まっておしゃべりをしていたら、お金はそれほどかからない(Arek SochaによるPixabayからの画像)

この謎はグローバル経済の成長にかかわってくる。

 1946~64年生まれのベビーブーム世代は史上最も幸運な世代だ。

 裕福な国々で計2億7000万人を数えるこの世代の大半は、戦争を戦った経験がない。ビートルズのライブを観に行けた人がいる。力強い経済成長とともに育った。

 全員が裕福というわけではないが、金利の低下、住宅建設の減少、そしてハイペースな所得拡大が組み合わさった結果、全体としてかなりの額の富を築き上げた。

 国の人口の20%を占める米国のベビーブーム世代は、その純資産の合計額の52%(76兆ドル相当)を握っている(図1参照)。

図1

 この世代が次々に引退していく今、その蓄えで何をするつもりなのだろうか。

 この問いが重要なのは、クルーズ船の運行業者やゴルフ場の経営者だけではない。

 この世代はお金持ちであるため、彼らが何にお金を使うかという選択はグローバル経済の成長やインフレ、そして金利にまで非常に大きな影響を及ぼすことになる。

 しかもこの世代は、米国のみならずほかの裕福な国々でも財布のヒモが非常に固いことが分かってきた。

 持っている富を使うどころか、貯蓄を守るか、さらに増やそうとしているほどだ。

 2020年代と2030年代における経済の大問題は、多くの人が予想していた「なぜベビーブーム世代はあれほどたくさんお金を使うのか」ではない。

 問題は「どうしてあんなに少ししか使わないのか」になるだろう。