(英エコノミスト誌 2024年5月11日号)

シンガポールの新首相、ローレンス・ウォン氏(4月16日撮影、写真:AP/アフロ)

ローレンス・ウォン新首相の下で、都市国家シンガポールは変化を遂げる新たなチャンスを手にしている。

 シンガポールは高い評価を幅広く得ている国だ。

 西側の政治家は著しく高い生活水準と効率的な行政府をうらやましいと感じ、新興国の人々は貧困から抜け出すためのお手本だと考えている。

 しかし、600万人の人々が住まうこの島国は今、世界最大級の3つの困難に見舞われている。

 西側と中国との緊張関係、人口の高齢化、そして気候変動だ。

 確かにシンガポールはとても小さく、その政策をほかの国が容易に真似できるとは限らない。

 だが、問題への対処の仕方は今後も注目に値する。解決策の一端は、政治をより開かれたものにすることでなければならない。

リー家の支配に事実上の幕

 シンガポールの運命は本誌エコノミストがインタビューした新しいリーダー、ローレンス・ウォン氏の手に委ねられる。

 ウォン氏は5月15日、リー・シェンロン氏の後継として首相に就任する。これにより、独立以来59年間に及んだリー家の支配が事実上幕を下ろす。

(ゴー・チョクトン氏が第2代首相を14年間務めたが、その間も次の首相リー・シェンロン氏が閣内で待機していたうえ、初代首相のリー・クアンユーも「上級相」としてとどまっていた)

 リー・クアンユーは第3代首相の父で、人種政治で騒然としていた植民地の中継港をきらびやかなメトロポリスに変貌させた。

 その政治の要諦は、貿易に開かれた国になること、地政学的中立性を保つこと、そしてテクノクラート(技術官僚)の政府にすることだった。

 また、これらに比べれば魅力はないが、政敵を打倒しようと言論の自由を抑圧した。シンガポールの1人当たり国内総生産(GDP)は現在、8万8000ドルに達している。