(英エコノミスト誌 2024年4月27日号)
インドは「次の中国」ではないが、自国と世界を変える力を秘めている。
インドのナレンドラ・モディ首相は6週間後には3期目を勝ち取り、ネルー以来の重要なリーダーとしての地位を固めると見られている。
紅茶売りの家庭に育ったモディ氏が選挙で勝利するのは、その政治スキル、ヒンズー・ナショナリストのイデオロギーの影響力、そして民主的な制度・機関を弱体化させた自身の活動の反映だ。
だが、モディ氏がインドに繁栄と国力をもたらしているとの認識が一般の有権者やエリート層の間に広がっていることも反映している。
27年にも世界第3位の経済大国に
モディ氏の率いるインドは、強権的な指導者が率いる国が脱グローバル化の流れのなかで豊かになる方法を探る実験だ。
今後10~20年間、インドが高成長を続けながら社会の混乱を回避できるか否かが、14億の国民と世界経済の運命を決めることになる。
モディ氏の方策は「ある程度」うまくいっている。
だが、インドの成功が続くかどうか、そしてモディ氏が政権を維持することに成否がかかっているのか否かについては疑問が残る。
インド経済は年6~7%のペースで拡大しており、世界の大国のなかで最も高い成長率を誇る。
新しいデータによれば、民間部門の景況感は2010年以降で最も高い水準にある。経済規模はすでに世界第5位で、2027年までには米国、中国に次ぐ第3位に躍り出る可能性もある。
インドの影響力は新しい指標にも現れている。
例えば、米国企業がインドで雇用している従業員の数は150万人に上り、ほかのどの外国よりも多い。
インドの株式市場は世界第4位の時価総額を誇り、航空輸送市場は世界第3位の大きさだ。インドによるロシア産原油の購入は国際価格を動かす。
また、富の増加は地政学的な影響力を強める。
イエメンの反政府勢力フーシがスエズ運河を混乱させた時、インドは軍艦10隻を中東に派遣した。
米国のジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ大統領(当時)は、インドが独立した立場を貫くか否かを問うことなく、この国の機嫌を取ってきた。