対ドル変化率で見た円の本当の実力

 NEERに関し、図に掲載されていない通貨も含め、下落幅の大きい順に5つ並べると円、トルコリラ(▲7.8%)、ブラジルレアル(▲7.2%)、アルゼンチンペソ(▲5.6%)、メキシコペソ(▲4.3%)と続く。

 後述するように、常連のトルコリラやアルゼンチンペソはさておき、ブラジルレアルやメキシコペソはこれまでの上昇幅が大きかったことの反動である。その点を割り引く必要がある。

 なお、より直感的に分かりやすいだろう対ドル変化率に関し、G20通貨の動きを比較したものが図表②だ。

【図表②】

主要通貨のスポットリターン(対ドル、2024年年初来)
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 この場合、最弱通貨はブラジルレアル(▲14.4%)で円(▲14.1%)よりもやや下落幅が大きい。しかし、ブラジルレアルは2022年(+5.1%)、2023年(+8.2%)と2年連続で対ドルでの上昇を確保した稀有な通貨である(こうした通貨はG20通貨ではメキシコペソだけだ)。

 これに対し、円は2022年(▲14.6%)、2023年(▲6.9%)と2年連続、対ドルで下落した通貨だ。足許の変化率だけでは見誤る経緯がある。円だけが常に売られているという現実を直視する必要がある。

 経緯を見るという意味では次ページの図表③を見てほしい。円安局面の始まった2022年、それが続いた2023年そして2024年初来の変化幅を累積して各通貨を比較したものだ。