“第二の陸軍”と言われる「革命防衛隊」とは?

 反米の最右翼であるイランに、昔の米製兵器が多数存在する光景は奇異に映るが、これこそが同国がたどった歴史の残滓(ざんし:残りかす)でもある。

 同国は1970年代まで親欧米のパーレビ皇帝が独裁体制を敷き、オイルマネーを背景に西側から最新鋭兵器を買いあさり「中東の警察官」を目指した。欧米もこれを喜んで支え、当時の最新兵器を競って売り込んだ。

 F-14はその最たるもので、当時の最新鋭で極めて高価なこの空母艦上機を装備できたのは、本国の米海軍とイランだけ。1980年代に大ヒットした、トム・クルーズ主演のハリウッド映画「トップガン」に登場した戦闘機としても有名だ。

 だが1979年にホメイニ革命が起こりパーレビ王朝は倒され、宗教色を前面に押し出したイスラム政権が発足すると、一転して反欧米へとかじを切る。並行して共産主義とも相いれず、旧ソ連や中国など社会主義国も敵視した。

 この結果、欧米からの武器供与は完全にストップ。消耗部品の調達にも事欠くありさまで、今日に至っている。

 イランの孤立主義は冷戦終結ごろまで続き、その後西側と対立する中ロ、北朝鮮などとの関係を深め、これらの国々からも徐々に武器を調達していく。「敵の敵は味方」の発想だ。

 海軍は小規模で外洋で活動する能力はあまりないが、最近、水中排水量600トンほどの沿岸潜水艦1隻を“国産”し、巡航ミサイルを搭載したとアピールしているのが少々気になる。

 イラン軍には、陸軍とは別に“第二の陸軍”とあだ名される「革命防衛隊」が並立している。兵力も19万人と大所帯で、戦車や火砲を使った陸上戦が主体の陸軍と違い、歩兵を中心にテロ・ゲリラなど不正規戦を重視している。国内の核施設の防衛や、イラクやシリアなど外国に将兵や教官を派遣する役目も果たす。国内では秘密警察としても活動し、陸軍の不穏な動きをチェックする“カウンター部隊”でもある。

 革命防衛隊は独自の海軍、空軍を擁している点が特徴で、戦闘機・攻撃機を約20機、小型艇・武装ボート約100隻を所有している。後者はホルムズ海峡でたびたびタンカー攻撃や拿捕を引き起こしている。

フーシ派に供与する武器の積載が疑われるイランの小型船を拿捕しようとする米海軍の駆逐艦フーシ派に供与する武器の積載が疑われるイランの小型船を拿捕しようとする米海軍の駆逐艦(写真:米海軍ウェブサイトより)
タンカーを拿捕しようと群がるイラン革命防衛隊の武装ボートを米海軍ドローンが赤外線撮影タンカーを拿捕しようと群がるイラン革命防衛隊の武装ボートを米海軍ドローンが赤外線撮影(写真:米海軍ウェブサイトより)