中東最大の動員兵力誇るも古株兵器しかない「イランの軍事力」

 9000万人弱の人口と広い国土、石油資源が豊富で核開発にも熱心なイランは「軍事大国」と見られている。

 だが、前出の軍事専門家は「兵隊の頭数は多いものの、兵器は半世紀前で時間がストップしたような旧式ばかり」と指摘する。

 イランの軍事力を別掲の表にまとめたが、動員兵力(正規軍兵力+準軍隊+予備役)は100万人で中東最大を誇る。ただし軍事専門家の指摘の通り兵器に目をやると、50年以上前の“老兵”がほとんどだ。


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 例えば1500台あるMBT(主力戦車)で最も新しいのが旧ソ連/ロシア製のT-72で、1970年代前半にデビューした2世代前の車両。ウクライナ侵略戦争でも活躍し、その大半は現代戦に通用するよう大幅に改修されている。だが、イランのT-72が大規模な近代化改修を施されたという話は聞こえてこない。

 続く米製のM-60や旧ソ連製のT-62、英製のチーフテンはさらに世代が古く、どれも1960年代に覇を競ったMBTだ。さらに旧ソ連製T-54/-55や、その中国製コピーの59式に至っては、1950年代に量産化が始まったビンテージ・カーだ。

2021年に行われたイランの軍事演習2021年に行われたイランの軍事演習(写真:Iranian Army Office/ZUMA Press/アフロ)

 空軍の戦闘機・攻撃機も同様で、総数は265機とそれなりの数を持つが、中身は50年以上昔の空を闊歩した機体ばかり。何とか現代戦で通用しそうなのは、ウクライナが対ロシア戦で重用する旧ソ連/ロシア製のMiG-29の35機と、米製のF-14トムキャット10機くらいだろう。

 ただしF-14は本家の米海軍でも約20年前に全機退役し、消耗部品の調達が極めて難しいため(そもそもアメリカが部品を融通するはずがないが)、実際に飛べるのは2~3機、しかも100%実力を発揮できるかどうかも疑わしい。

 一方、米製のF-4ファントム(60機)と同F-5(70機)は機数も多く主役のようだが、両機とも半世紀以上前のベトナム戦争を経験した古株で、現代の空中戦、特に欧米やイスラエルの空軍相手では全く歯が立たない。