対米貿易黒字の大元は自動車産業の米国投資
2023年を例に取れば、米国からの黒字は33%で2位のアジア全体(26%)と比べても相応に差がある(図表②)。第一次所得収支黒字は過去の投資の「あがり」であるから、それだけ日本が米国に投資してきたことの証左と言える。
【図表②】
かかる状況下、こと米国に関して言えば、日本の経常収支黒字に感謝することはあっても、批判する理由は乏しい。日本に限って言えば、「監視リスト」の条件として①の基準は不備があると言わざるを得ない。
もちろん、対米貿易黒字についてはいろいろな議論があり得るが、その黒字項目の多くを稼ぐ自動車産業こそ、米国に対する大きな投資なのだから「対米貿易黒字だから不当」という単純な話にはなり得ない。
米国における外資系企業の雇用者数、雇用者報酬、いずれで見ても日本のシェアは2位だ(図表③)。同国の雇用・賃金環境に対する貢献は非常に大きい。
【図表③】
なお、「Japan」の項における円相場に対する記述では「2023年の円は対ドルで6%以上下落し、2024年4月末時点では11%近く下落している。また、実質実効為替レート(REER)では2022年の11.5%に加え、2023年には5.5%下落し、50年ぶりの低水準で推移している」と異例の通貨安環境について認識が共有されている。
ちなみに、2024年5月時点のREERは長期平均(20年平均)に比較して▲37%の過小評価という過去に経験のない水準まで切り下がっている(図表④)。
【図表④】
過去の本コラムでも繰り返し議論してきたように、既に需給構造の変容が大分進んでしまったことを思えば、REERの円高方向への調整はインフレによって進む公算が大きいと筆者は予想している。この点、今後は内外金利差もさることながら、内外物価格差に着目した為替分析も多くなるだろう。