個人消費を刺激できるか?

 今回の定額減税は家計や景気にどんな影響を与えるのでしょうか。

 日本では現在、大企業の収益が絶好調で、株価もバブル期以来の高水準にあります。しかし、日本経済は低迷から抜け出せていません。

 物価変動の要素を除いた2024年1月〜3月期の実質国内総生産(GDP、1次速報)は、直前の2023年10月〜12月より0.5%も減少しました。2四半期ぶりのマイナス成長で、この状態が1年間続くと2.0%減になるという深刻な局面を迎えています。

 大きな要因は一向に好転しない個人消費にあります。日本の個人消費はGDPの6割ほどを占める大きさですが、個人消費は2024年1月〜3月期に0.7%減となりました。

 個人消費のマイナスは4・四半期連続です。未曾有の危機と言われたリーマン・ショックの影響が現れた2008年から2009年にかけ、個人消費は4・四半期連続でマイナスとなりました。現在はそれ以来、15年ぶりのマイナスが続いているのです。

 こうしたなかで行われる6月の定額減税は、春闘で打ち出された賃上げと相乗効果をもたらし、落ち込む一方の個人消費を上向きにさせるはずだと期待されています。ただ、春闘による賃上げの実現は大手企業などに限られており、賃上げの波は必ずしも中小・零細企業には届いていません。

 定額減税の効果も入ってくると見られる2024年4〜6月期のGDPは、8月15日に公表される予定です。果たして、個人消費のマイナスは下げ止まり、好転の兆しを見せるのでしょうか。

 お手元に「定額減税分」が明記された給与明細があれば、それをじっくりと眺め、家計だけでなく、日本経済全体の先行きについて考えるのも大切なことかもしれません。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。