老い楽の悦びを得るために

 男性が男性であること。つまり、挿入が伴う性交が可能か否は、男たちにとって最大の関心事である。

 世の男性たちは、陰茎の硬い勃起により、女陰に挿入することにこだわる傾向がある。

 しかし、中高年になれば、肉体的な老化が表面化し始める。

 英国で行なわれた6000人以上を対象とした研究によれば、50代の男性の15%、80代の男性の90%が勃起不全との調査結果がある。

 また、70代の男性の33%がオーガズムに達するのは不可能または難しいとの調査結果もあり、現実的な問題として、加齢により勃起や射精がスムーズにいかないこともあるだろう。

 一方、中高年の女性の多くは、会話やスキンシップといったコミュニケーションの方が挿入よりも重要であり、性生活では挿入にはこだわらない、むしろ必要ない、という意見も数多くある。

 若者のように情動的でエネルギッシュなセックスだけが、性愛行為ではない。

 老い楽(らく)とは老後の愉しみ、老後の安らぎの意である。

 ゆったりとした時間、互いに思いやりと相手を慈しむ心を通い合わせ、身体を合わせる。

 願わくば、たとえ老齢となろうとも、そうした安寧の境地の中で性愛行為に勤しみ、恍惚とした悦びに包まれながら、老い楽を過ごしたいものである。

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