UAEとサウジの対立が顕在化する可能性

 UAEの来年の生産枠の引き上げたことにより、OPECプラス全体の原油生産量を増加させる必要性が生じたというのが筆者の見立てだ。

 中東情勢を巡ってサウジアラビアとUAEは共同歩調をとっているが、ハマス・イスラエル紛争勃発直前の両国関係は険悪になっていた。

 OPECプラスの減産に対する考え方の相違に加えて、イエメンやスーダンに関する外交方針で激しく対立したため、サウジアラビアのムハンマド皇太子はオフレコ会見で「UAEに対して懲罰的な措置を取る」と言明していたほどだ。

 その後、収まったかに見えたが、今回の決定を契機に両国の対立関係が再び顕在化する可能性は排除できない。

 日本の原油輸入の8割以上を占める両国の関係を今後も注視していくことが必要だ。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。