UAEがサウジアラビアを揺さぶる?

 2010年代初頭に米国のシェールオイルが台頭した際にも、OPECは増産による価格下落で対抗した。たしかにシェールオイルに打撃を与えることはできたが、世界の原油価格が急落したため、OPECも深刻な被害を受けた経緯がある。

 今回の増産戦略は当時と比べてはるかにマイルドだが、その副作用には要注意だ。

 関係改善が進んでいる米国に配慮した可能性も考えられる。

「10月からの増産」というメッセージは、米国の夏季のガソリン価格の上昇を抑制する効果があると指摘されている。高インフレのせいで再選が危ぶまれているバイデン大統領にとってはグッドニュースだ。

 だが、アラブ首長国連邦(UAE)をOPECプラスに引き留めるための苦肉の策だったというのが本当の理由だったのではないだろうか。

 前述の会合で、UAEの来年の生産枠だけが日量30万バレル引き上げられた。UAEは近年、原油生産能力を着実に増加させており、生産枠の引き上げを強く主張していた。

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 この要求を退ければ、UAEはOPECから脱退するかもしれない。世界の原油市場での影響力のさらなる低下を回避するため、OPECプラスの盟主であるサウジアラビアはUAEの要求をのまざるを得なかったのではないか。