原油価格下げて「西半球」のライバルに打撃

 米国では夏季のドライブシーズンにかけてガソリン需要が旺盛になるのが常だが、足元は原油とガソリン在庫がともに増加基調にある。

 これまで堅調だった個人消費に息切れ感が出てきたことが背景にある。低所得層を中心に旅行支出を減らす動きが顕著になっている*1

*1米低所得層、4月は旅行支出削減 業界見通しに影=民間調査(6月4日付、ロイター)

 アジア地域の1月から5月までの原油輸入量も前年比日量10万バレル増にとどまっており、「世界の今年の原油需要は日量220万バレル増加する」とのOPECの想定に対して疑問の声が上がっている。

 減産を続けていても原油価格が一向に上昇していない。それにもかかわらず、OPECプラスはなぜ、原油価格を下落させる可能性がある10月以降の「増産」に舵を切ったのだろうか。

「OPECプラスは世界の原油市場におけるシェア確保を重視し始めた」との見方が有力だ*2

*2OPEC+ Switches Strategy To Defend Market Share(6月5日付、ZeroHedge)

 OPECプラスは減産による原油価格の引き上げに注力してきた。だが、皮肉にも、西半球の高コストの原油生産国(米国、カナダ、ブラジル、ガイアナなど)が生産を伸ばす手助けする形になってしまっており、OPECプラスの世界の原油市場におけるシェアは低下の一途をたどっている。

 2017年に59%だったシェアは2023年には51%にまで低下している。

 このため、OPECプラスは「増産」というカードを切ることで原油価格を一時的に低下させ、西半球のライバルたちに打撃を与えようというわけだ。