かつてのナショナルサービスは「大戦後の徴兵制」

 英国のナショナルサービスは第二次世界大戦時に導入された徴兵制で、戦後も急激に変化する国際情勢に対応するため「平時の徴兵制」として身体的に健康な17~21歳の男子すべてを対象に継続された。戦後、徴集兵は当初18カ月間服務したが、朝鮮戦争(1950~53年)の間は2年間に延長された。

 49年から、ナショナルサービスが廃止された63年までに200万人以上が英陸海空軍に徴兵された。大戦が終わっても英国の海外における軍事コミットメントが終わったわけではなかった。英国は崩壊しつつある帝国を支え、世界、特に中東における影響力を再構築する必要があった。

 米ソ冷戦で英国でも兵員の増強が求められる中、インド独立で英国は巨大なインド軍を使えなくなった。ナショナルサービスはこうした兵員不足を解消するため導入され、訓練を受けた徴集兵は世界各地の英軍駐屯地に送られた。当時植民地だったケニアやマラヤではゲリラと戦った。

 ロシアのウクライナ侵攻、ドナルド・トランプ前米大統領の返り咲きの可能性が強まる中、英軍のパトリック・サンダース陸軍参謀総長は今年1月「英国が紛争に巻き込まれる場合に備え、市民を訓練して装備を整え、市民軍を創設する必要がある」と徴兵制論議を呼びかけた。