英ジャーナリスト「国防を選挙の中心に据えるべきだ」
ジャーナリストで歴史家のマックス・ヘイスティングス氏はタイムズ紙(5月27日)に「国防を選挙の中心に据えるべきだ。ロシア、中国、イラン、北朝鮮からの脅威に直面している今、政治家はどのようにわれわれを守るのか説明しなければならない」と説く。
「戦争を回避する最善の方法は十分な武装をすることが歴史上の教訓だ。しかし、英国を含む欧州は裸同然。トランプ氏が米大統領に返り咲けば、欧州は恐ろしく脆弱になる。抑止力は現在も敵を怯えさせる手段の保有を要求している」(ヘイスティングス氏)
ウクライナ戦争では米国の軍事支援が停滞したため、ロシア軍が攻勢に転じる。中国の生産力、研究開発力はすでに米国を凌駕する。その文脈では、スナク首相がナショナルサービスを総選挙の争点に据えたのは正しいのかもしれない。
しかし世論調査で保守党は最大野党・労働党に最大30ポイントも引き離される。欧州連合(EU)離脱を主導した保守党は英仏海峡を渡ってきた難民申請者のルワンダ送り法を成立させた。降って湧いた今回のナショナルサービス案は「熟慮断行」というより「軽挙妄動」の類だろう。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。