(国際ジャーナリスト・木村正人)
[ロンドン発]米国のウクライナ軍事支援の再開で戦況はどう変わるのか。ウクライナ中部クリヴィー・リフを拠点に戦闘外傷救護を兵士や市民に指導する元米兵マーク・ロペス氏(ウクライナ軍将校兼軍事教官)にインタビューした。
ロシア軍、“ゴルフカート”による無謀攻撃も
――ロシア軍は現在、前線で攻勢に出ています。どんな状況ですか。
マーク・ロペス氏(以下、ロペス) 地上作戦は5月の第1週に入り、ロシア軍がアウディーイウカを占領した後、チャシフヤールを制圧しようと懸命に攻めている。これらの町はウクライナ東部ドネツク州にある。
ロシア軍は数千の部隊を移動させたが、その中には戦闘テスト済みの主力部隊もあれば、戦闘効率はあまりよくない動員された部隊もある。
この作戦地域での戦闘には5~15両の装甲車による攻撃、1~5両の戦車や歩兵戦闘車両、武装したゴルフカートによる計画性のないばらばらの突撃が含まれる。ロシア軍は武装ゴルフカートまで使っている。
――弾薬の差はウクライナ軍が1に対してロシア軍が5~10と言われています。実際の状況はどうですか。
ロペス 昨年秋、ロシア軍は3対1の砲撃優勢だった。米国の弾薬提供の遅れで現在、その比率は10対1、局地的には20対1にまで拡大している。これは静的な陣地を維持するウクライナ軍の領土防衛隊や機械化されていない通常部隊に壊滅的な影響を及ぼしている。
陣地への実際の攻撃に関しては、ロシア軍は依然として、そこそこの訓練しか受けていない部隊による「肉弾攻撃」を使い、次から次へと波状攻撃を仕掛けてくる。
これらの部隊の多くは、ネパール、アフリカ、キューバからの契約兵士である。このような外国人戦闘員の使用は前線戦闘部隊からの高い脱走率につながっている。