2年連続で年度代表馬に

 キタサンブラックの父・ブラックタイドの血統は超一流だったのですが(ディープインパクトと同じ、父・サンデーサイレンス、母・ウインドインハーヘア)、母・シュガーハートが短距離血統だったため、当初キタサンブラックに長い距離はむずかしいと思われていました。しかし、ここが並の馬と違うところで、そのたくましさを増した精神力が長距離レースで発揮されます。

 レースでは落ち着きを保ったまま騎手の手綱どおりに力走、距離に左右されることなく、その強さを見せつけたのです。

 ダービー以後の2年間、G1(12レース)、G2(3レース)で9勝を挙げる活躍によって、2016、17年と2年連続の年度代表馬に選ばれます。年度代表馬をプロ野球に例えれば、セ・パ両リーグを通じての年間MVPにも値し、それを2年連続受賞したのですから、同馬の偉大さがおわかりになることでしょう。

 活躍はこれに留まらず、種牡馬になってから最初の年に世に出したのがイクイノックス。これがなんと父親以上の孝行息子で、2023年に世界的なレースで勝利し、世界ナンバー1ホースの称号を獲得します。結果、同馬もまた2022、23年と2年連続の年度代表馬に選出。親子で2年連続の年度代表馬となったのは史上初めてのことでした。

2023年11月28日、ジャパンカップ(G1)で優勝したイクイノックス 写真/伊藤 康夫/アフロ

 キタサンブラックの引退から6年後、息子のイクイノックスが再び偉業を達成──「競馬は血統のスポーツ」とも称される確たる証と言えますね。競馬の楽しみと奥深さはこんなところにもあるのです。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)