第14回日本歌手協会歌謡祭で熱唱する淡谷のり子さん(1994年当時) 写真/共同通信社

(堀井 六郎:昭和歌謡研究家)

朝ドラ『ブギウギ』、もう一人の主役

 NHKの朝ドラ『ブギウギ』が始まってひと月余り、趣里が演じる福来スズ子(モデルは「ブギの女王」と称された、笠置シヅ子)が草彅剛演じる作曲家・羽鳥善一(モデルは作曲家・服部良一)に厳しく歌唱指導されているテレビ画面を見ながら、今、この原稿を書いています。

 スズ子と羽鳥がまだ出逢って間もない時期で、これから長い二人の歴史が続いていくことになります。

 朝ドラではスズ子が主役なので、どこまで羽鳥との出来事がドラマ化されるかはわかりませんが、この二人の出逢いは、その後の歌謡界に新風を吹き込んだだけでなく、昭和20年代、敗戦国だった日本を元気づける大きな役割を果たしました。

 昭和60年(1985)、笠置が70歳で没したときの葬儀は、服部が委員長を務めています。

 笠置シヅ子のことは以前にご紹介していますので、今回は、もう一人の英雄、服部良一について綴ることにしましょう。

余人をもって代えがたい才人、服部良一

 服部良一の偉大なる功績をあえて短い文章で結論付けると、「大衆歌謡の世界に舶来の香りを持ち込んだ服部ソングを確立し、日本中を席巻したこと」でしょう。ジャズ、ブルース、そしてブギウギを日本風に味付けして創作したハイカラ歌謡の創始者です。

 作曲・編曲だけでなく、ユーモアあふれる作詞も数多くこなし、作詞・作曲・編曲のいわば三刀流という大車輪の活躍、さらには映画音楽、舞台音楽も加わり、昭和26年(1951)、44歳までに2000曲を量産しました。

 こうした実績を振り返りつつ、現在、NHKや民放BSで毎晩のように放送されている「昭和歌謡番組」で時折流れてくる服部ソングを聴くと、令和という今の時代でも服部の作品が十分鑑賞に堪えうる名曲ぞろいである、その事実をあらためて知ることになるのです。