恐竜ロボットが出迎える「変なホテル」(写真:共同通信社)恐竜ロボットが出迎える「変なホテル」(写真:共同通信社)
  • さまざまな分野で人手不足が深刻化する中で、ロボットの導入によって問題を解消しようとする動きが広がっている。
  • だが、ロボットを導入すればすべての問題が解決すると考えるのは早計だ。一緒に働く人間に大きな心理的負担が生まれる場合があるのだ。
  • ロボットの導入によって残っていた人間が辞めてしまったということがないよう、人間に対するケアも必要になる。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

ロボットが接客するホテルがオープン

 昨年6月30日、沖縄に新しいホテルがオープンした。その名は「タップホスピタリティラボ沖縄」。「ラボ(研究所)」などという、およそホテルには似つかわしくない名前が付いているのにはちゃんと理由がある。実はフロントでの受付やルームサービスの提供といった各種業務を、人間の従業員ではなくロボットが担当するという、先進的な実証実験を行うための施設だ。

 報道によれば、実に10種類以上、23台のロボットが導入されているとのこと。他にも同ホテルには、顔認証による客室のドアの開閉など、デジタル技術を活用したさまざまな仕組みが導入されている。こうしたテクノロジーを通じて、どこまで業務の効率化、ひいてはホテル業界における人手不足に対応できるかを検証することが目的だ。

 ロボットがいるホテルというと、エイチ・アイ・エス(HIS)グループが国内20カ所で展開している「変なホテル」を思い出す方も多いだろう。

 2015年7月に、長崎のハウステンボスに1号店をオープンさせた同ホテルでは、フロント業務や荷物運び(ポーター業務)などにロボットを導入。翌2016年には「世界初のロボットホテル」としてギネス認定までされている。

「変なホテル」の場合、ロボットはお客を楽しませるためのエンターテインメントの役割も担っているが、ホテル業界でロボットが導入される場合、やはり人材不足を補うことが目的とされる場合が多い。

 また、技術進化によってロボットに任せられる業務が急拡大したこと、さらにCOVID-19を経てパンデミック対策充実の必要性が認識されるようになったことから、ホテルを含むいわゆる「ホスピタリティ業界」でのロボットの導入は今後急成長すると考えられている。

 あるレポートでは、ホスピタリティ業界をターゲットにしたロボットの市場規模について、2020年の約3億ドルから2030年の約31億ドルへと、10年間で10倍以上に拡大すると予測されている。

 これほど急速に導入が進むのであれば、人手不足問題もあっという間に解決するのではないか──と思って当然だが、そう判断するのは少し待った方が良さそうだ。

 技術的な面で、まだロボットが人間の従業員を完全に置き換えるまでに至っていないから、という話ではない。

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