それから私たちは100万円の札束の帯封をちぎり、2億円を部屋中にまき散らした。もはや、札束はただの数字の書かれた紙にしか見えなかった。たかが金、されど金か。彼が鷲づかみにして放り投げた札が空中をひらひらと舞う。さらに彼は札の中に埋もれてみせた。彼の目はいたずら小僧のように光り、満足げな笑みを湛えていた。

米誌タイムに掲載された高利貸しのストーリー
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「返せん奴は腎臓を売るしかないやろ」

 取材した記事のタイトルは「借金が返せなかったら腎臓を売れ!!」だったが、その話は本当だった。

「借金を返せん奴には24時間追い込みをかけたな。おっさんが電話の向こうでおいおい泣くんや。俺は相手の鼓膜がおかしくなるまで怒鳴り散らした。相手の家に行ってボコボコにしたこともあるな。それでも返せん奴は腎臓を売るしかないやろ。身を切る返済や。マニラに行って片っ方の腎臓を取り出して欲しがってる奴に高く売るんや」

 彼は「全国腎臓器移植協力会」という怪しげな組織をでっち上げていた。

 彼の内面を覗く気もないが、この取材から半年後にたまたま新宿の通りですれ違った杉山氏はどこか生気の抜けたような顔をしていた。取材の時のハイテンションはポーズだったのかもしれない。

 彼はその後、2002年に詐欺罪で逮捕され懲役7年6カ月の実刑判決を受けた。そして収監された獄中で2009年に病死したという。まさに阿修羅のような人生の享年は71だった。