彼の金への執着は尋常ではなかった。闇金融業で財を築いた杉山治夫氏のことだ。 闇金融、略して「闇金」とは、どこからも金を借りる術がなくなった人たちが最後に駆け込む金貸しのことだが、当然のことながら利息は法外なものとなる。トイチ(10日で1割)という言葉は有名だが、週倍(1週間で倍)、ヒサン(1日で3割)まであるという。つまりは人の弱みに付け込む悪徳金貸しだ。そして、この1990年代の初めまでは世の中の裏でひっそりと営業していた闇金を、その派手なパフォーマンスで一躍万人に知らしめたのが、杉山治夫氏と言っていい。 彼の生い立ちは貧しさを通り越して悲惨だった。1938年に高知市で生まれたが、船員の父親