4.いつもどこかが変な金正恩の写真

(1)射撃視察中にたばこを手にするリーダーは模範にならない

 金正恩氏が砲兵訓練を視察している時に、たばこを手にしている。

 砲兵射撃の時は、射場のどの地域でも火気(たばこ)厳禁である。さすがに、将軍たちにはたばこを手に持っている者はいない。

 軍のトップである金正恩将軍閣下自らは、軍の模範となるべきである。トップが守らないようでは、兵もどこかで規則を守らないことに繋がってしまうだろう。

写真7 たばこを手に持っている金正恩

(2)裸眼で見えるのに、双眼鏡を手にする金正恩

 金正恩氏の目は遠くの目標を見ているが、手は固定式の双眼鏡にある。 目で見えるのであれば、双眼鏡を覗く必要はない。

 ほかの写真では、将軍たちは双眼鏡を覗いてはいない。火砲射撃の細部を見るのであれば、金正恩や将軍達が同じものを見なければいけない。

 一人だけが双眼鏡を覗くのは、将軍たちと金正恩が別々のものを見るという形になっている。これは、あり得ないことだ。

 つまり、双眼鏡を手にしているのは、あくまでポーズなのだ。

写真8 双眼鏡を覗く素振りの金正恩

5.このような訓練映像を見せつける理由とは

 軍事専門家から見れば、前述した訓練内容と写真は見せかけであることが分かる。

 これらは初歩的な訓練であるし、その中に多くの不自然な映像や合成写真が含まれているのである。

 なぜそうするのか。

 1つは、北朝鮮の人民と周辺諸国に対して、北朝鮮の通常戦力の欠陥を隠して、軍事強国であることを示すこと。

 2つ目は、人民に対しては、金正恩氏が偉大な国家の指導者であることを植え付けたいためだろう。

 軍事強国であることを示すには、多くの砲弾やロケット弾を発射している状況、特に砲口から多くの砲弾やロケット、さらに砲口から出る火炎を見せれば、韓国のソウルに撃ち込まれるという恐怖感を与えられる。

 一般国民にとっては、これらの映像は恐怖に見える。脅威を大きく見せれば見せるほど、恐怖を感じるということになる。

 北朝鮮の軍事演習を日米韓の国民に、メディアを通して見せつけることで、北朝鮮が軍事的強国であることを認識させることができるのだ。

 もう一つの理由として、国家指導者としての金正恩氏は、まだ若いという点が挙げられる。

 金日成主席や金正日総書記よりも頼りないという印象を完全にぬぐい切れてはいない。

 例えば、米国のドナルド・トランプ元大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平主席と比べると、その若さゆえ、偉大性やカリスマ性というイメージに欠ける。

 金正恩氏やその取り巻きは、急いで彼を偉大なる国家指導者として作り上げ、認知させる必要がある。

 その政策の一つとして、ごまかしの映像を作り出して、宣伝しているのだろう。

 北朝鮮の兵器には、古い、使えない、故障するといった多くの欠陥があるが、それらを何かで隠す必要がある。

 それが、合成写真や作り物の写真なのだ。

 写真では、軍事専門家以外の者を簡単に騙すことができる。だが、それらの欠陥兵器を戦場に持って行き使えば、欠陥が暴露されるのは当然のことだ。

 それが、北朝鮮兵器の実態なのだ。