(3)自走榴弾砲に弾薬は搭載されていないのか

 戦車の形に似ている自走榴弾砲は、射撃すれば直ちに射撃陣地から撤収し移動できる。

 そして、迅速に移動するために、弾薬がその内部に置かれている。

 弾薬を補充する場合には、弾薬を積載した車両が同行して弾薬の補充を行う。そのため、牽引する砲とは異なり、弾薬を入れた弾薬箱を砲の傍に置くことはしない。

写真3 自走榴弾砲の射撃と後方にある弾薬箱

 だが、この写真では、砲兵自走榴弾砲の後ろに弾薬と薬莢が置いてある。これは、現実的ではないやり方である。

 かつて、筆者が牽引砲の射撃で砲弾や弾薬箱が火砲の近くに置いていないのは、発射する弾数が少ないからだと発信したことがあった。

 北朝鮮は、それを受けて自走砲でも同じことを実施したのではないか。

(4)長い砲身は、射程は伸ばせるが、寿命が極端に短い

 北朝鮮は、北朝鮮領土から韓国ソウルを射撃するためには、火砲の射程を延伸する必要がある。

 通常の火砲であれば、20~30キロの射程であるが、北朝鮮は170ミリ火砲の射程を50キロ以上に伸ばすために、砲身を長くして大量の装薬(砲弾を飛ばすための火薬)を使用している。

 これは、北朝鮮の独創的なものである。

写真4 170ミリ自走加農砲(GUN)

 米欧やロシアはこの方式を採用していない。

 なぜなら、北朝鮮のように長い砲身で大量の装薬を使用して発射すれば、砲身の劣化が激しく壊れやすいためだ。

 その結果、戦争中に多くの弾丸を発射できなくなる。

 このため、米欧や日本は、射程を伸ばし精度を上げるために、長射程誘導砲弾を開発し使用している。

 これらの砲弾がウクライナに供与され、ロシア軍の火砲部隊や兵站施設が破壊されている。

 これは、北朝鮮ではまだ長射程誘導砲弾が開発されていないことを示す証拠写真だ。

(5)火砲が火に包まれているのはトラブル発生

 写真2の白矢印の先の自走砲は、火に包まれている。砲自体が火炎に包まれることは、通常ないし、あってはならないことだ。

 なぜなら、こんなことになれば自走砲内の砲弾や装薬(発射薬)が、熱で自爆する恐れがあるからだ。

 この燃え方は、砲炎とは異なり、何かが勢いよく燃焼しているようで、合成写真でもないようだ。

 なぜこのようなことが起きたのか。

 不要になった装薬が砲の外に落下し、それが砲炎で引火して燃えた可能性がある。つまり、砲兵の射撃規律が守られていないことが考えられる。